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第15話 糧(人間の本性を垣間みた)

Author: marimo
last update publish date: 2026-06-16 22:47:26

 インタビューは、終盤に差しかかっていた。

 穏やかな空気の中で交わされてきた質問が、ここで一段、踏み込んだものへと変わる。

 「それで、そのお宅の方は、まったく気づかなかった……と?」

 慎重な問いだった。

 だが、インタビュアーの視線は鋭く、ひかるに逃げ場を与えない。

 ひかるは、静かに頷いた。

 「ええ。全く」

 声のトーンも、表情も、先ほどまでと何一つ変わらない。

 あまりにも穏やかで、あまりにも淡々としていた。

 「そこでは、嫌なことはありませんでしたか?」

 少し踏み込んだ質問に、スタジオの空気が張り詰める。

 テレビの向こうで見ている視聴者の多くが、同じ疑問を抱いていた。

 ――人気女優だった過去を隠し、

 ――名もない“家政婦”として暮らす日々。

 そこに、何もなかったはずがない。

 ひかるは一瞬だけ視線を落とした。

 ほんの数秒、言葉を選ぶような沈黙。

 テレビの前で、俊哉は無意識に身を乗り出していた。

 その沈黙が、やけに長く感じられる。

 やがて、ひかるは顔を上げ、静かに口を開いた。

 「いいえ。嫌なことはありませんでした」

 スタジオが、しんと静まり返る。

 
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